お久しぶりです!
こにし動物クリニック 獣医師の谷山です!
今日はあまり皆さんに馴染みが無いかもしれませんが、体腔で発生するヘルニアの中でも体表ヘルニアについて、
病態や好発犬種、注意すべき年齢や性別の違いについてお伝えします。
まずヘルニアとは何なのか❔ですが、簡単に表すとヘルニアとは
臓器や組織が本来あるべき部位から
脱出した状態を示します。
その中でも体表ヘルニアの代表格である
①臍ヘルニア(でべそ)
②鼠径・陰嚢・大腿ヘルニア
③会陰ヘルニア について話していきます。
①臍ヘルニア
人でも「でべそ」として知られている臍ヘルニアですが、犬猫の多くは先天性の臍ヘルニアです。
ペットショップにて発生率を調べたところ発生率は0.6%程だったようです。
脂肪組織が陥凹している場合は無痛性で容易に返還可能ですが、
腸管や腹腔内臓器が嵌頓している場合ヘルニア嚢は硬く、熱感や疼痛があります。
いずれにせよ、6ヶ月齢を超えても自然閉鎖せずにヘルニア物質が陥凹している場合は整復を行い、快適な生活を送れるようにアシストしてあげることが重要です。
※注意すべきポイント
ここ最近で臍部の腫瘤に気づいたという経過を有する中年齢以上の子に関してですが、
臍ヘルニアに類似した肥満細胞腫(悪性腫瘍の1つ)も報告されています…
もう一度お伝えしますが、臍ヘルニアの多くは先天性です。
それ故、中年齢以降で急に臍ヘルニアを発症することは稀ですので
細胞診や組織生検を行う必要があります!
②鼠径・陰嚢・大腿ヘルニア
これらは後部腹壁ヘルニアに分類され、脱出するヘルニア輪の部位によって名称が変わります。
いずれも鼠径部や陰嚢に腫脹を認めることが多く、肉眼所見だけでは明確に鑑別できません。
ヘルニア輪が大きくなると小腸や膀胱・子宮などが脱出してしまうことがあり、
嵌頓すると生命を脅かす問題となりかねません。
中でも鼠径ヘルニアは比較的よく遭遇するタイプです。
先天性および後天性に起こる可能性があり、いずれも鼠径菅の構造的な問題によってヘルニアが起きます。
加齢にともなう鼠径ヘルニアはメスの犬のほうが生じやすいとされています。
避妊手術をしたメスの犬では発生が少なく、発情中・妊娠中に比較的多く発生することからエストロジェンの産生との密接な関係が示唆されています。
※注意すべきポイント
嵌頓による腸管壊死・子宮破裂が起こる可能性があるため外科的な整復を積極的に勧めます。
実際に人では、鼠径ヘルニアにおいて外傷性に小腸が穿孔した報告もあります…
③会陰ヘルニア
会陰ヘルニアとは、直腸を支持する筋肉群が萎縮した結果ヘルニア孔が発生し、
腹腔内・骨盤腔内の臓器や組織が会陰部の皮下に脱出するものです。
ヘルニア内容は主に脂肪組織・前立腺・膀胱ですが、
重症例では腸管などの腹腔内臓器が脱出することもあります。
膀胱がヘルニア孔から脱出し反転した結果、尿道が屈曲して尿閉塞を引き起こし、
排尿障害による急性腎不全の状態を呈することもあります。
シグナルメントですが、
中高齢で未去勢の小型犬または中型犬に多発し、ときに大型犬にも発生します。
高発犬種としてウェルシュ・コーギー、ミニチュア・ダックスフンド、ボストン・テリア、トイ・プードルなどが挙げられます。
さらには、頻回な腹圧の上昇もリスクファクターです。
つまり「よく吠える」 「よく咳をする」などによる筋結合の緩みも発生要因になりうるということです。
※注意すべきポイント
ヘルニア整復術は実施が絶対必要ではないものの、
宿便による腸穿孔から引き起こされる細菌感染や、
尿閉塞による急性腎不全など致死的な経過をとる疾患も存在するため、
診断でき次第、比較的早期に整復術を実施すべきです。
(高齢になるにつれ麻酔のリスクが高まる可能性もあります。)
簡単にではありますが、代表的な体表ヘルニアは以上となります。
いずれのヘルニアにおいても嵌頓してしまった場合重篤な症状が現れやすい。
という特徴があります。
症状が少しでも気になる方はお早めに当院を受診下さい。