トキソプラズマ症のお話

こんにちは!

こにし動物クリニック、獣医師の関原です。

最近朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたが、みなさん体調を崩していませんか?

気温の変化で免疫力が落ちて、下痢をするワンちゃんがものすごく増えています。

いつもよりうんちが緩いな、と感じたら一度便検査をすることを勧めます。

腸内細菌のバランスが乱れているかもしれません。

さて、今回は猫ちゃんと妊婦さんに関連する「トキソプラズマ症」についてのお話です。

まずトキソプラズマってなんですか?というところから説明します。

トキソプラズマは、原虫と呼ばれる寄生虫の一種で、動物の細胞内に寄生する非常に小さな寄生虫です。

トキソプラズマに感染した場合の症状は初感染時2回目以降とで変わってきます。
初感染時、健常者であれば無症状〜一時的な風邪様の症状(発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなど)程度で回復するため、気づかないうちにトキソプラズマに感染していることが多く、全人類の1/3が感染しているとも言われています。

免疫力が著しく低下している場合、例えば、HIV感染者、免疫抑制治療を受けている人、高齢者、新生児などでは重症化することがあります。

感染後の体内ではトキソプラズマに対する抗体が産生されるため、二回目以降の感染では、症状が出ることはありません。

上図はトキソプラズマの生活環を描いたものです。

ヒトがトキソプラズマに感染する経路は主に3つあります。

1つ目は豚や羊などの動物の組織中に寄生したトキソプラズマを肉ごと摂取する経路です(図中⑥)。

ただしトキソプラズマは十分に加熱すれば死滅するため、生肉を食べない限り感染の危険性はありません。

2つ目は猫のうんちに含まれているトキソプラズマの虫卵を摂取することです(図中⑦)。

例えば飼っている猫のトイレの掃除をした後で、よく手を洗わずに食器に触れたり、調理をしたりすることで虫卵を摂取する危険性があります。

また野良猫にも注意が必要で、公園の砂場や家庭菜園の土などにあるうんちから感染することもあります。

そして3つ目は、妊娠中に母親から胎児に感染する経路です(図中⑪)。

妊娠中に初感染した場合、トキソプラズマが胎盤を通過して胎児に感染することがあります。これを「先天性トキソプラズマ症」と言い、最悪の場合、流死産に至ります。

妊娠以前から抗体を持っていた場合(=トキソプラズマ感染歴ありの場合)は、妊娠中にトキソプラズマに感染しても抗体によって抑えられ、胎児に感染することはありません。

ですので、今後妊娠・出産を計画中の女性の方はあらかじめトキソプラズマの抗体検査を受けておくことをオススメします。

以下に条件ごとの簡単な対処法を載せておきますので、自身が当てはまる項目をお読みください。
1.妊娠中、自身のトキソプラズマ抗体陽性

感染時期によってはトキソプラズマが胎児に感染する可能性がありますので、人間の医師にご相談ください。
2.妊娠中、自身のトキソプラズマ抗体陰性

出産までにトキソプラズマに感染した場合、トキソプラズマが胎児に感染する可能性があります。生肉の摂取、屋外の砂場や土などへの接触は避けましょう

また、猫ちゃんから感染するリスクがあるため、猫ちゃんを飼っている方は下記の「猫のトキソプラズマ抗体検査」も合わせてお読みください。

3.妊娠前、自身のトキソプラズマ抗体陽性

体内に免疫が出来上がっているので、今後トキソプラズマに感染しても問題ありません

4.妊娠前、自身のトキソプラズマ抗体陰性

妊娠後〜出産までにトキソプラズマに感染した場合、トキソプラズマが胎児に感染する可能性があります。生肉の摂取、屋外の砂場や土などへの接触は避けましょう

また、猫ちゃんから感染するリスクがあるため猫ちゃんを飼っている方は下記の「猫のトキソプラズマ抗体検査」も合わせてお読みください。

猫のトキソプラズマ抗体検査

猫ちゃんからヒトへとトキソプラズマが感染する危険性があるのは「初感染から1ヶ月間」だけです。

1ヶ月後には猫ちゃんの体内で抗体が完成するため、感染の心配はありません。

家に妊婦さんがいるなど、猫ちゃんからヒトへの感染が気になる方は猫ちゃんにトキソプラズマ抗体検査を受けさせましょう。

必要なのはおよそ1mLの血液で、2〜3日で判定が出ます。

抗体検査の結果に沿って、下記の対処法をお読みください。

1.猫ちゃんのトキソプラズマ抗体が陽性
 今後猫ちゃんからトキソプラズマが感染する危険性はありません。隔離などの処置は特に必要ありません。

2.猫ちゃんのトキソプラズマ抗体が陰性

「未感染のため抗体陰性」と、「感染後1ヶ月以内であり、まだ抗体が完成していないために抗体陰性」の2パターンが考えられます。

1ヶ月後に再検査した上でどちらのパターンなのかを判断します。

 

一ヶ月後の再検査でも抗体陰性だった

この場合、「未感染のために抗体陰性」という事になります。

今後感染した時に、うんちの中に虫卵を排出する可能性があるため要注意です。

 

一ヶ月後の再検査では抗体陽性になった

この場合、一回目の検査前に感染しており、「一回目の検査〜二回目の検査の間に抗体が完成した」ということになります。

現在は体内に抗体があるため、今後うんちの中に虫卵が排出される危険性はありません

 

 

今回は人獣共通感染症である「トキソプラズマ症」についてお話させていただきました。

かなり複雑な感染症ですので、文章だけではなかなか理解しにくい部分をあったかもしれません。

「トキソプラズマ症」に関して、不明な点、疑問点などありましたら、お気軽にご相談ください!!

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