歯を抜かない!?犬猫の根管治療

こんにちは!獣医師の藤原です。

先日、津田卓二先生の歯科の根管治療(歯内療法ともいいます)の実習セミナーに参加してきました。

人のほうではメジャーな根管治療ですが犬猫ではどうなのか?ご報告させていただきます。

<そもそも根管治療とは??>

 歯の根の中の神経や血管など(あわせて歯髄と呼ばれます)が通っている管を根管と言います。 歯髄は根の先端から歯の中に入り、歯の成長発育に重要な役割を果たします。
 歯の根の治療である根管治療は歯髄が炎症や感染を起こした時に行う治療法の1つです。 歯髄の炎症・感染の原因は犬・猫では歯周病や外傷による歯折がほとんどです。炎症や感染をそのまま放置しておくと、 歯が痛んだり、根の周囲の組織に炎症が広がったり、歯肉が腫れたりします。 場合によってはリンパ節が腫れたり発熱したりと全身的にも影響が出ることもあります。 根管治療によって、これらの症状が軽減したり、治癒したり、予防できたりするのです。
 根管治療では、痛んだ歯髄を除去して、根管を注意深く清掃し、 再度の感染を防ぐために根の中に詰め物をします。このように歯髄を除去する治療法を抜髄と呼びます。その結果、歯を抜歯せずに残すことができます。

始めに先生の講義を聞き、模型と生歯を使っての実習と盛りだくさんなセミナーでした。

根管治療の手順はおおまかに以下のような流れになります。


①根管の拡張
 根管にアプローチするために歯冠に穴を開ける。人では天蓋を全て外しますが、犬猫はエナメル質が薄く天蓋を全て削ってしまうと強度が弱くなるため、削るのは最小限にします。

②根管の形成・拡張と清掃
 壊死・感染した歯髄を除去する。最も重要な手順です。ファイルという細い棒状の器具で少しずつ削っていきます。削っている位置がずれていかないように何度もレントゲンで確認しながら根管の穴を広げていきます。

③根管充填
 拡張し終えたら根管の穴の中を洗浄し、隙間なく水酸化カルシウムペーストを送り込みます。さらにガッタパーチャという棒状の詰め物を加圧しながら詰め込みます。その上に液状のガラスを覆い、最後はコンポジットレジンで表面を整えます。人の場合は一番上層には被せもの(銀歯やセラミックなど)をしますが犬猫はしません。エナメル質が薄いためです。

根幹治療は非常に時間がかかる治療法です。
私もかつて奥歯の根管治療を受けましたが、何回か歯科医院に通った記憶があります。

毎回同じ作業をしてないか・・・?と疑問に思ってたんですが、それはファイルでしっかり念入りに削っている工程だったようです。

動物の場合は人のようには口を開けてくれないので全身麻酔での処置になります。

                     

慣れた講師の津田先生でもたった1本の上顎第四前臼歯の根管治療に3時間かかるそう!(*_*;)

             

             

抜歯をしたくない場合で、かつ、残すことに意味がある歯が根管治療の対象になります。上下の噛み合わせる歯がどちらも歯周病になっている場合などは適応外です。

また、治療後も定期的にレントゲンを撮影し、感染が起こっていないか継続してみていく必要があります。

適応になる歯はなかなか少ないのが現実ですが、治療の選択肢の1つにできればと思います。

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